タイル君その1
by 冴木瑠荏さん
僕がこの家に来たのは、数ヶ月も前のまだ寒い時だった。
「こちらをお願いできますか」
「はい、わかりました」
「日数的にはまだ余裕がございますので、
ゆっくりでよろしいのでお願いします」
「大丈夫ですよ。1ヶ月もすれば綺麗なシャワー室が出来ますから」
そういって、職人の人が1枚1枚タイルをはめ込む作業をして
気づいた時にはオーシャンブルーの綺麗なシャワー室が出来あがり、
僕は、鏡がむかいあうというところにはめこまれた。
僕をそのシャワー室に埋め込む作業をしていた人たちがいなくなり
年おいた老人が入ってきて、満足そうな笑みを浮かべた。
おそらく、この人は若い頃をさぞかしもてただろうというような顔つきで、
「これで、圭様に満足していただけるでしょう」
と、1言添えて、それからしばらくの間姿を消した。
僕は眠くなっちゃってそのまま誰も帰ってこない静かな家にいついたわけだけど、
ふと、人の話し声がして目が覚めた。
「悠季は気に入りますかね」
ぽそりと吐いた言葉はバリトンのきいた低い声でおまけに身長も高かった。
どうやら、気にしている人の名は悠季という人らしい。
綺麗な背中がシャワーでぬれていて、それに対してか
「また、こんな贅沢やって」
と、テノールの甘い声がした。
だけど、声を出していた人に向かって
「これで便利になりました」
なんて、にっこりわらい、
「お祖父さんへの借金がかさんで首が回らなくなくなるぞ」
と、呟いた声が優しそうに言ったのを聞いた。
さらに、二人の会話は続き、
「僕名義の土地を一、二ヶ所売ればいいことです」
なんて、しゃぁしゃぁといって男の人はシャワーを浴びるのを続けていた。
「もうっ、そういう問題かい?」
「えぇ、その程度のことですので」
などと、僕からしたら考えられないようなことを口にしたんだ。
「…まぁ、たしかに便利で助かるけどさ。
君のコーディネート?おしゃれだし、使いやすそうだよね」
まだ僕の前に姿を現してくれないテノールの持ち主は嬉しそうに囁いた。
「君も気に入っていたと、伊沢に言っておきます」
あ、あの人は伊沢さんと言うんだ?
すごくきれいな顔の人だったよね。
もちろん、今僕の目の前でシャワーを浴びているこの男の人も
惚れ惚れするぐらい綺麗だけど、この人には恋人っているのかな?
ちょっと、気になるぞ。
そんなことを考えていたら、男の人が
「二人で使える広さですよ」
といって、もう一人を誘い出した。
しかし、男の人は時間がないよと、誘い文句にズボンをたくし上げて入りこんできて、
綺麗なラインをしている全裸でシャワーを浴びていた人のお尻をまるで
子供のお尻を叩くみたいに叩いたんだ。
入ってきた男の人は、女性のように木目細かい色白の肌の足を
すらりと見せてくれて、にっこりと微笑んだ顔が全裸の人を捕らえていた。
「うっ、なんです?」
「自分の胸に聞いてみたら?」
男の人が言った一言に、にんまりとして
「では、開宴を一時間くりさげるよう電話をしてきます」
と、叩いた人を動揺させるように早口で言った。
「じゃないって!」
ぼわんと響いてしまったテノールはとても気持ちが良くて…
はっとしてしまったうちに、言葉が続いてた。
「TPOをわきまえろって意味だよっ、きまってるだろ!?」
慌てた男の人に、むくれながらも「冗談ですよ」と微笑んで、
そんな微笑に、
「だってあと15分で出かけようって時にさぁ、無理だろ?ほら、機嫌直せって」
と、恋人のような会話をして、二人は僕が思ってもみなかったことをしだしたんだった。
「キスもなしにですか?」
「さっさとしたくしないと遅刻するぞ」
「主賓は最後に到着するべきでしょう?」
背の高い男の人に、この綺麗な顔立ちの人は弱いらしい。
「…はいはい、キスだけだよ」
きゅっとシャワーを止めてテノールの声の持ち主は
全裸の男の人の胸に抱きよせられるようにより沿って
やがてキスをした。
「んっ…う…ふっ…」
ぴちゃりと音が聞こえてきそうなぐらい甘いキスを見せつけられてしまい、
僕はいまから始まるかもしれないものに目のやり場を困ってしまった。
シャワー室でもあり、窓のない空間ではこの二人を監視できるのは僕だけで…。
それでも、二人の行為は本当に綺麗だった。
その理由がなぜかは良くわからないけど、一つだけ言えるのがある。
それは、どちらも愛しているということだ。
どこかで喧嘩をしようが、片方に愛想をつかれようが、
きっとこの二人には深い絆が生まれているんだと思う。
だって、そのキスはとても甘くて端から見ても映画のワンシーンを
思わせるほどに美しかったから。
この二人のことを僕はずっと見守っていきたいと思う。
これからも、ずっと。
話を最近書いていないので下手だった(爆)
リベンジは次回!(うふふ、二人のHはあったよね?)
冴木さん、謙遜は程々に^^
リベンジ楽しみです。
これからどれくらいここのタイル君が知識を身につけるのか……
実に興味深いですね。