《春の兆し》 by冴木瑠荏さん
二月半ばともなれば、季節は春へと移行する季節。
そんな季節が僕の住んでいるところにも訪れようとしている。
「う……ん……」
少し肌が寒くて、暖かいところへと体を動かしてみた。
それに気づいたらしい腕がもぞりと動き、僕の体を密着させるように
体を抱きしめてくれる。
うん、気持ちがいい。
「寒かったですね、すみません」
そういって、なじんだ声が耳に入りこむ。
「…いい。暖かいから……」
まだ、眠っていたい。このぬくもりのなかで…。
「ふぁぁ…」
白いシーツの海に、何もつけないからだが二つ泳いでいる。
「おはようございます」
抱きしめていた腕が背中をさすり、瞳が僕を見つめた。
「おはよう、圭」
二十センチの身長さをおもわせない顔が今、僕の隣にある。
それだけで、うれしくなってしまうのに、神様は贅沢だとおもう。
「君のことが好きだよ」
「えぇ、もちろんですよ」
額にかかった髪をのけて、額にキスをくれる。
「んっ…!」
それでは、不満だと体が答え、欲しい所にしてほしいと口が告げる。
「けい、そこじゃないだろ、違うよ…僕が欲しいのはここだよ」
額にキスをしていた圭の体を引き寄せて、唇にキスを送る。
「……ゆ、悠季!」
どうやら、恋人は朝から積極的な僕に驚いたらしい。
「春は、いろんな動物が活動する時期だろ?」
「それは、そうですが…今日はまだ二月ですよ?」
「誕生日がすぎたら季節は春なんだよ。
そんな動物みたいに、僕も君がほしいといったら、君はどうする?」
「そうですね…僕は、こういった行動に出たいとおもうのですが、いかがしょう?」
背中を往復していた手がいつのまにか、胸へ移動し、誘惑のように僕を誘いかける。
「ふふ、構わないから、嬉しいんじゃない」
くすくす笑って、口付けを交わす。
それから後は、二人だけで愛し合える時間。
いや正確には、誕生日プレゼントをくれた恋人と甘い時間を過ごしたいと言う
僕の我侭なのかもしれない。
兆すってのはいいですね。
朝から互いの温もりを楽しめるって、至福だと思います^^。