こたつネタ
『購入理由/使用方法』 byあやかさん
今シーズンは寒さも雪の量も尋常ではない。いつもは、ほうきで掃けば終わりというほどの雪しか降らないこの町に、スコップを用いなくてはならないほどの雪が降っているのだから、異常気象としか言いようがない。
僕が‘ソレ’の購入を決めたのは、赤い頬で交わした会話からだった。
「いやぁ、今日もすっごい降ったね。二人でやっても一時間かかっちゃうんだ」
「僕がもっと手際よく動ければよいのですが、除雪というのはあまり経験したことのない作業でして・・・これから日々精進します」
僕が一人でやることで、たとえ一時間かかろうと二時間かかろうと、このほっそりと華奢な彼に除雪などという肉体労働をさせたくはない。しかし、心優しい彼が、「僕一人で大丈夫です」などという言葉を聞き入れてくれるはずはなくて・・・結局、雪国育ちの悠季が除雪では主導権を握る。
「少しでも早く君がマイナスの世界から温かいこの家の中に入れるよう、除雪のコツというものを掴まなくては」
僕としては至って真剣に発した言葉だったのだが、
「あははははっ、そっ、そんな、除雪ごときで、真剣にっ、ぶっ、はははははっ」
と悠季は一笑に付してしまった。
「そんなに可笑しいですか?」
君のことを想って言ったのに、そんなに笑われては哀しいです・・・
「ごっ、ごめん、だって君があまりにも真剣に言うからさ。でも・・・」
寒さで染まった頬と同じくらいに赤く染めた目元で悠季は囁いた。
「そういう君のユーモアなところが僕は大好きなんだ・・・」
「悠季・・・」
驚くほど自然に僕を喜ばせてくれる永遠の想い人は、静かに瞳を閉じて口づけを待っていた。想いの限りを詰め込んだ深い口づけを贈る。
コートに残った冷気も熱いキスに溶けていく。僕らは全てのものを溶かすかのようにきつく抱き合って暖をとった。
僕が煎れたコーヒーで除雪の疲れをほぐしていたとき。何気ない口調で悠季は言った。
「君と抱き合って温め合うのもいいけど・・・こういう除雪の後ってこたつが恋しくなるよなぁ」
「こたつですか?」
僕はこたつを見たことはあるが、実際に使ったことはなかった。桐院家にはなかったので。
彼はそれを素早く察したらしく、僕を包み込むような優しい瞳で「うん」と頷いた。
「こたつって入ってるだけで温かい気持ちになれるもんでさ。除雪の後は、何をするよりもまず先にこたつに潜り込んでたなぁ。子供の頃、友達と雪遊びをした後も、必ずこたつの中に入って、またその中で遊ぶんだ」
「こたつの中で遊ぶのですか?」
「うん、足でね押し合ったりするんだ。別にどうってことないんだけどさ、それが無性に面白かったりするんだよね」
悠季が他の人間とこたつの中でじゃれ合う様子を想像してみた。足で押し合ったりするということは、絡み合ったりすることもあるのだろうか。
それは、幼い悠季がやっていたことのはずなのに、僕の頭の中では今目の前にいる悠季の姿と重なった。
僕はこたつの購入を決めた。
「圭、これは何?」
「見ての通りのものですが」
「なんでここに?」
「買ったからですよ」
「どうして?」
「二人で温まりたいと思ったからです」
「それだけの理由で、‘これ’を買ったのか?」
「えぇ。君と一緒に温もりを分かち合える。こんな素敵なことがありますか?」
「それで、こたつねぇ・・・」
悠季の口から懐かしむような思い出話を聞いた翌日。僕は早速、‘こたつ一式セット’を買い揃えてみた。
悠季は僕の突然の行動に驚き、昨日の発言を悔いているようだったが、次第に瞳がランランと輝きだした。
しかし、瞳より素直でない口からは、
「はぁ、こんな高いものを・・・・・・それでも、買ったものは使わないともったいないよな」
などという言葉が。
そんな皮肉を言いながらも、こたつ布団に足を差し入れ、「あったかい」というように微笑んでくれたところをみると、どうやら喜んでもらえたらしい。
僕は安堵に胸を撫で下ろしながら、悠季の隣に入り込もうとしたのだが、
「あっ、だめだよ」
という言葉に固まった。ゆっ、悠季?やはり怒っているんですか?
「二人で隣同士に入っちゃったら、狭くて足が伸ばせないだろ?こたつっていうのは向かい合って入るものなんだよ」
よかった。怒っているわけではないんですね。僕は、悠季の言葉に従い、向かい側の面に腰を落ち着けた。
「なるほど、確かにこうすれば足は伸ばし合えますが・・・君から遠くなってしまいますね」
悠季は、温かさからではない頬の赤みをみせ、「バカ・・・」とうつむいた。
そんな悠季をもっと照れさせてみたくて、僕は言葉を重ねる。
「しかし、こうして君を真正面から見つめられるのですから、良しとしましょうか」
「まったく・・・君は褒め殺し大王だな。でも・・・」
照れ隠しに顔を背けている悠季は、そこまで言って言葉を切った。
「でも、なんです?」
僕の問いに、悠季はまだ赤みの残る目元を僕に向け、「こっちに顔を寄せて」と囁いた。
僕が言われたとおりに、テーブルに肘をつき、悠季に顔を寄せると、悠季もテーブルの上に身を乗り出した。
「でも・・・そんな君が好きなんだ・・・こたつありがとうね、圭。とっても、あったかいよ・・・」
僕を喜ばせることの出来るこの世で唯一の想い人は、そんな甘言で僕を天界まで羽ばたかせ、さらにチュッという口づけをくれることで楽園の住人にした。
「悠季っ」
感極まって伸ばした腕は、パシッと叩き落とされた。
「だっ、だめだからな!こんな昼間からっ。あっ、そうだ!こたつといえば、みかんだよね?確かあったはずだから、持ってくるね」
だめだからな、と言われましても。そうさせているのは君なのですよ?悠季。
「ふふっ、君ってさぁ、ホントにそういうこと苦手だよなぁ」
蜜柑をむく僕の手つきを見ていた悠季が笑いを含んだ声でしみじみと呟いた。
「あぁ、どうもこういう小さなものを扱うのは苦手でして」
気恥ずかしい気持ちになりながら、うつむいた僕に「はい」という声がかかった。
「なんです?」と目を上げると、悠季は綺麗にむかれた蜜柑を僕に向かって差し出していた。
「あーん、して。ほら」
僕が口を開けると、悠季はその一片を口の中に入れてくれ、「うまい?」と微笑んだ。
「うまいです。君がむいてくれたことで、甘みを増しましたね」
悠季は、ふふっとくすぐったそうに笑って、「はい」とまた一つ口元に運んでくれた。
蜜柑を食べさせようとしてくれた悠季の指が、僕の唇に触れる。
人の手には性感帯というものがあって、僕の悠季にもそれがある。なのに、いいのですか?そんな無防備に誘うようなことをして。
僕は唇に触れた悠季の指につと舌をはわせた。
「あっ、こらっ」
という窘めを無視して悠季の手をつかみ、その美しく、けれど男らしく骨張った指一本一本にキスを贈る。
「あっ・・・け、圭っ・・・んっ、だめ・・・」
いいですか、悠季?感じている?
目元を潤ませて僕を見つめる悠季に情欲を掻き立てられて、僕は新たな攻撃に出た。
「足を押し合ったりして遊んだ、と言っていましたが、こんなふうにしたのですか?」
指や指間への愛撫を続けながら、僕は悠季の足に足を絡めた。
「そっ、そんなことっ・・・」
「では、こうですか?」
足先で悠季の太股を撫で上げ、股間部分をまさぐる。
「やっ、圭っ・・・んっ、あっ、はぁっ」
悠季の欲望が勃ち上がり始めているのが伝わってきた。
ストイックな悠季の雰囲気が甘やかなものに変わり、僕を煽る。
もう、限界のようですね?あぁ、僕もっ。そんな色っぽい顔を見せられては、たまらないっ。
「ベットに行きましょう、悠季」
悠季は涙の滲んだ艶やかな瞳を僕に向け、「うん」と小さく頷いた。
斯くして、策略家桐ノ院氏は、こたつ購入によって新たな情事の場所を確保した。
使用法は少々・・・・・・いえ、少々どころじゃなく間違ってますけどね^^;
end♪
こたつでってのは48手にもありますよね。
火傷に注意♪ですがね^^
圭のがたいだとちょっと本番は辛いかな。
前戯にはとても向いてるかも