ホテルマンキャスティングby冴木瑠荏さん
「悠季、そちらの荷物をお持ちしてさしあげなさい」
「はい」
ホテルのフロントマネージャーとして僕に指図するのは恋人である圭。
世間では噂されないように、内密に交際をしているわけだ。
「お荷物をお持ち致します」
ベルボーイとして働き、フロントで言われた部屋までお客を送り届ける。
それが、僕の役目の1つだった。
「ありがとう」と、言われ、にこやかに返してまたフロントへ戻る。
すると、同じベルボーイの五十嵐が声をかけて来た。
「ん?なんだい?え?桐ノ院さんが?」
どうやら、圭が僕一人を呼んでいるということらしい。
「ごめん、じゃ、ここは任せちゃっても?あぁ、ありがとう」
カツカツと音を立てて、フロントへ近寄り圭を探したが見つからない。
「マネージャーは?」
「自分の部屋へ行ったよ」
「で?なんで僕が呼ばれたわけ?」
「お茶をお持ちして欲しいから」
そういったのは、何か裏がありそうな川島さんだ。
「わかりました。どこにあるんですか?それは」
「あ、それはね〜」
川島さんの説明で僕は、ルームサービスとして部屋を訪れることになった。
が…時既に遅し!
フロントの巧妙な手口で僕は圭の前に差し出されたに過ぎなかったらしい。
「入ります」
ドアを開けて入ってみれば、圭は既に眠っていて
そんな姿に「ちぇ」っという、悔しさを覚えた。
「まったく!何様だよ!僕はまだ働いてるんだゾ!このっ!」
弾力性のあるベッドの脇にそっと座りこんで圭を見た途端だった。
がばっと首にてをまわし、僕を求めに来た圭はあっというまに
僕を虜にさせる甘いキスをくれた。
「んっ…うっん…け、圭…」
「待ってましたよ、悠季」
「な、なんで…」
「君の笑顔を振り撒く姿を見て、嫉妬したんです」
引き寄せられた体は圭をまたぐ形でベッドに引きづりこまれた。
「ですから、僕にその笑顔だけを見せてください」
その口が紡ぐバリトンは僕の体は知っていた。
「んっ…うぅん…っはぁ…」
舌が絡み僕を奪い、やがて遊び始めた圭の手が僕の股間を触ってきた。
「んっ!やっ…」
布越しに触られる感触に体がゾワリと反応する。
「嫌ではないはずですよ、悠季」
「だ、だって…まだ、仕事が…!」
「ありませんよ。今日は終了です。
君をここへ命じたのは僕ですからね。
ほら、手をどけて…そうじゃないと、もっと嫌がることをしますよ」
「え…?」
そう言った途端だった。グズリと入りこんだしなやかで細い指に
僕はうわずった声を出した。
「あぁ!け、けい…!!!」
「まだですね」
まるでわかるように僕を身悶えさえ、やがて欲しくなって
口にする言葉を聴いて圭はその思いを実行してくれる。
「…もう、欲しいですか?」
「うんっ…っはぁ…け、けい…」
一番僕が感じやすい形で圭は入りこんでくると腰を抱きかかえ、
動いた。
「ひゃぁ…はっ!ま、まだ…やだ…け、けい〜〜!!!」
そうやって、この日は過ぎた。
傷とも言うべき赤いマークは白い肌にありありと見うけられて…
そんな赤いマークを圭は1つ1つと数え、笑っていた気がする。
でも、僕も自分が付けたマークを圭の体に見ることが出来て
嬉しかったりもする。